3.運転・組立・解体

3-1 運転室

タワークレーンの運転室は夏暑く、冬は寒く作業環境はあまり良いとはいえない。運転室は鉄板製なので夏の直射日光に晒されると触れないほどその表面は熱くなる。制御機器からも発熱し室内は熱くなるばかりで、窓の開放と扇風機でしのいでいたのである。暖房器具も電気ストーブだけで窓枠やドアの隙間から風が吹き込みなかなか室内は暖まらない。
昭和49年に池袋副都心で運転室にウインド型ルームクーラを取付けた。冷房能力が小さく満足出来るものではなかったが、一歩前進というところだ。その後、しばらくすると新造機にはクレーンメーカでセパレート型ルームエアコンが取付けられて出荷されるようになった。
運転室内は狭く、外部との連絡はインターホンが付いていれば良いほうだ。トイレは無く小便用にポリタンクを置く程度であった。平成に入り、燃焼式トイレが市販されタワークレーンにも取付けられるようになった。当初は旋回フレーム上の邪魔にならない所にキャブトイレのハウスを設置して取り付けた。その後、大型機の運転室にはトイレスペースも設けられ取り付けも簡単になった。

3-2 操作レバー

タワークレーンの運転操作はコントローラで行なうが、電車型コントローラではコントローラの配置、ハンドルの操作方向等が各社まちまちで、同じ会社でも支店・センターにより異なる会社もある。JV工事ではタワークレーンの拠出が複数社になった時などは、タワークレーンにより操作レバーの操作方向が異なるためオペレータの人員配置に支障を来たした。
オペレータが休暇を取った時など、交代要員で派遣されオペレータが以前に運転していた機種とコントローラの配置や操作方向が異なるため、咄嗟の時に誤操作し鉄骨組み立て中のとび工が墜落するという事故も発生したこともある。
一部の中小機種には、従前からモノレバーを採用しているものがあり、大型機でも操作レバーを統一しようとの気運が高まり、平成2~3年頃からモノレバー式コントローラを新造機に採用した。既存機も順次改造してコントローラの配置と操作方向の統一を図った

3-3 マスト内エレベータ

オペレータは毎日高さ30m程のマストの梯子を昇り降りするが、これがまたひと仕事である。梯子の昇降は転落事故の危険性があり、角形マストではマストの途中へ仮設通路を取付ければ何とか入れるが、丸形マストでは途中からは入れないので、いつも下部の入口から昇ることになる。タワークレーンに関係する誰しもが、エレベータがほしいと思いながらなかなか実現しなかった。
昭和62年に新都庁舎でJCC900Hのマストが直径2.4mと大きくなり、初めてエレベータが取付けられた。平成3年には横浜ランドマークタワーでJCC1500Hには3人乗りのエレベータが導入された。平成5年に丸形マストで最も普及しているJCC400Hにもエレベータの取付けを計画し、建機メーカと協力して1人乗りのエレベータを開発した。エレベータが付いたからといって、直接生産性が上がる訳でもないので業界では余り普及していないが、マスト内エレベータはオペレータやメンテナンス要員にとって評判が良い。

3-4 組立・解体要領書

組立・解体要領書はそれぞれの機種について、各メーカより発行されたものがあるが組立・解体要領書の表現が各社各様で異なっているので、昭和50年に社内統一の表現で編集することとし、各メーカの組立要領書を整理して、新しく組立・解体要領書を作成した。
その後、各メーカも組立・解体要領書の表現と編集を揃える方向にあり、作業標準として、I社の組立・解体要領書が基本系となっている。
また、社内用にワンシート組立・解体要領図を作成した。ワンシート組立・解体要領図は組立作業の流れをA1判に流れ図のように配置して、一目で当日の作業が判るようになっている。
平成6年には日本クレーン協会でJCC200の標準的な組立・クライミング・解体要領を編集し、翌7年に組立・解体指導員の教育教本として発行された。

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